弁膜症、いま増えています
心臓には、血液を一定の方向に流すためのドアのような役割を果たす「弁」が4つ備わっています。弁膜症とは、これらの弁が加齢や動脈硬化、感染症などの影響で正常に機能しなくなる病気です。弁の開きが悪くなって血液が通りにくくなる「狭窄(きょうさく)」や、弁がしっかり閉まらずに血液が逆流してしまう「閉鎖不全」といった状態が起こります。初期の段階では自覚症状がほとんどないことも多いのですが、放置すると心臓に過度な負担がかかり、深刻な心不全を招く恐れがあります。大阪市北区の高石内科循環器クリニックでは、高性能超音波装置を用いた心臓エコー検査などを行い、こうした弁の変化を早期に、かつ精密に捉える診療を行っています。南扇町周辺にお住まいの方や、健康診断で心雑音を指摘された方は、まずは一度ご相談ください。丁寧な診察を通じて、皆さまの健やかな毎日をサポートいたします。
弁膜症の症状について
弁膜症はゆっくりと進行することが多いため、体がその状態に慣れてしまい、自分では病気だと気づかないケースが少なくありません。しかし、心臓のポンプ機能が低下してくると、日常生活の中でさまざまなサインが現れ始めます。
日常生活で感じる息切れ
最も多く見られる症状の一つが、運動時の息切れです。以前は楽に登れていた近くの階段や坂道で、急に息が切れるようになったり、動悸を感じたりする場合は注意が必要です。これは心臓が全身へ血液を送り出す力が弱まり、肺に血液が停滞しやすくなるために起こります。
むくみと全身の倦怠感
心臓の機能が低下すると、体内の水分調整がうまくいかなくなり、足のむくみが現れることがあります。夕方になると靴がきつくなる、指で押すと跡が残るといった症状は、心臓からのサインかもしれません。
足のむくみの詳細については「足のむくみ(浮腫)に注意」のページを参照してください。
胸の痛みや失神
特に大動脈弁狭窄症などの場合、心臓の筋肉に十分な血液が行き渡らなくなり、胸の痛み(胸痛)や圧迫感を感じることがあります。また、脳への血流が一過性に不足することで、めまいや失神を起こすこともあり、これらは非常に重篤なサインです。
その他の主な症状
- 体を動かした時にだけ感じる異常な疲れやすさ
- 夜、横になって寝ると苦しく、体を起こすと楽になる(起坐呼吸)
- 脈が乱れる感覚がある
- 風邪でもないのに長引く咳
不整脈の詳細については「不整脈とは?心拍数が速い・遅い」のページを参照してください。
弁膜症の原因について
かつて日本では「リウマチ熱」という感染症の後遺症による弁膜症が多く見られましたが、現代では加齢に伴う変化が主な原因となっています。
加齢と動脈硬化
長年、心臓の弁は休むことなく開閉を繰り返しています。加齢とともに弁にカルシウムが沈着して硬くなる「石灰化」が進むと、弁が十分に開かなくなったり、閉じにくくなったりします。これは血管の動脈硬化と同じようなプロセスで進行します。
先天的な要因
生まれつき弁の形が通常と異なる場合があります。例えば、通常3枚ある大動脈弁が2枚しかない「二尖弁」などは、若いうちは無症状でも、年齢を重ねるにつれて弁膜症を発症しやすい傾向があります。
心筋梗塞や心筋症の合併症
心筋梗塞によって心臓の壁の動きが悪くなったり、心臓自体が拡大したりすると、弁を支える組織が引き延ばされて逆流が生じることがあります。これを二次性(機能性)弁膜症と呼びます。
心筋梗塞の詳細については「心筋梗塞とは?」のページを参照してください。
感染性心内膜炎
血液中に侵入した細菌が心臓の弁に付着し、炎症を起こして弁を破壊してしまうことがあります。むし歯の治療や怪我などから菌が入り込むことがあり、急激に症状が悪化する場合があるため注意が必要です。
弁膜症の病気の種類について
心臓には4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)があり、それぞれに「狭窄」と「閉鎖不全」の可能性があります。ここでは臨床でよく見られる代表的な種類を解説します。
大動脈弁狭窄症
心臓から全身へ血液を送り出す出口にある「大動脈弁」が硬くなり、開きにくくなる状態です。出口が狭くなるため、心臓はより強い力で血液を押し出さなければならず、心臓の壁が厚くなる「心肥大」を引き起こします。高齢者に非常に多い疾患です。
大動脈弁閉鎖不全症
大動脈弁がしっかり閉じなくなり、一度送り出した血液が再び心臓の中へ逆流してしまう状態です。心臓は逆流してきた分も含めて再度送り出さなければならないため、心臓が拡大して負担がかかります。
僧帽弁閉鎖不全症
左心房と左心室の間にある「僧帽弁」が閉じなくなり、血液が逆流する病気です。弁を支える紐のような組織(腱索)が切れてしまう「僧帽弁逸脱症」などが原因となります。逆流した血液が肺にうっ滞しやすいため、息切れを感じやすいのが特徴です。
僧帽弁狭窄症
左心房から左心室への入り口である僧帽弁が狭くなる状態で、かつてはリウマチ熱が主な原因でした。血液が左心房に溜まるため、心房細動という不整脈を合併しやすく、血栓(血の塊)が飛んで脳梗塞を起こすリスクが高まります。
脳梗塞の詳細については「脳梗塞とは?手足の麻痺やしびれ・めまい」のページを参照してください。
三尖弁閉鎖不全症
右心房と右心室の間にある三尖弁で逆流が起こる状態です。単独で起こるよりも、他の左心系の弁膜症や心不全、肺疾患に伴って二次的に発生することが多く、足の強いむくみや腹水の原因となります。
弁膜症の治療法について
弁膜症の治療は、症状の程度や弁の痛みの度合い、そして患者さんのライフスタイルに合わせて慎重に検討します。一度壊れてしまった弁を薬で元の形に戻すことはできませんが、早期からの管理がその後の経過を大きく左右します。
定期的な経過観察と生活指導
軽度から中等度の場合は、すぐに出術が必要になるわけではありません。数ヶ月から1年ごとの定期的な検査で、進行具合をチェックします。当院では高性能な心臓エコー装置を使い、逆流の量や弁の開き具合をミリ単位で計測し、悪化の兆候を見逃さないよう努めています。また、心臓への負担を減らすための塩分制限などの食事指導も行います。
薬物療法
薬の目的は「弁を治すこと」ではなく「心臓の負担を減らして症状を和らげること」です。余分な水分を排出する利尿薬や、血圧を下げる薬、脈拍を整える薬などが用いられます。また、不整脈がある場合には血液をサラサラにする抗凝固薬を使用し、脳梗塞の予防を行います。
外科的手術(弁形成術・弁置換術)
症状が重い場合や、心機能の低下が著しい場合には手術が検討されます。自分の弁を修復する「弁形成術」や、人工弁(機械弁や生体弁)に取り替える「弁置換術」があります。当院では手術が必要と判断された場合、信頼できる高度医療機関を速やかにご紹介し、緊密に連携して術後のフォローを行います。
カテーテル治療(TAVIなど)
近年では、胸を大きく開かずに太ももの付け根などの血管からカテーテルを通して弁を留置する「TAVI(タビ)」という先進的な治療も普及しています。体への負担が少ないため、高齢や持病のために開胸手術が難しかった患者さんにとっても、新たな選択肢となっています。
弁膜症についてのよくある質問
Q1.健康診断で「心雑音」があると言われましたが、大丈夫でしょうか?
A1.心雑音があるからといって、必ずしも重い弁膜症があるとは限りません。しかし、弁膜症や他の心疾患の重要な手がかりになることは事実です。一度、心エコー検査を受けて、弁の状態を詳しく確認することをお勧めします。
Q2.自覚症状がなければ放っておいてもいいですか?
A2.弁膜症は「症状が出る前に見つけること」が大切です。症状が出てからでは、すでに心臓にかなりのダメージが蓄積している場合があるからです。自覚症状がなくても、指摘を受けた場合は定期的なチェックを欠かさないようにしてください。
Q3.弁膜症は運動を控えたほうがよいのでしょうか?
A3.病状の程度によります。軽い散歩などは推奨されることが多いですが、重度の狭窄がある場合などに激しい運動をすると危険な場合もあります。ご自身の状態に合わせた適切な運動量について、診察時に個別にお伝えいたします。
Q4.手術をしたら以前と同じ生活に戻れますか?
A4.多くの患者さんが、手術によって息切れなどの症状が改善し、日常生活の質が大きく向上します。術後のリハビリや継続的な内服、定期通院は必要ですが、前向きに生活されている方がたくさんいらっしゃいます。
院長より
心臓の弁膜症は、かつては「不治の病」に近いイメージもありましたが、現在では適切な時期に診断し、適した管理や治療を行えば、元気に長生きできる時代になっています。当院では、患者さん一人ひとりの「胸の音」を聴く聴診を大切にし、少しでも不安な兆候があれば、GE社製の高性能超音波装置を用いて迅速に心臓エコー検査を行います。この検査は痛みもなく、その場で心臓の動く様子や血液の流れをリアルに確認できる非常に精度の高いものです。
「最近、なんとなく疲れやすくなったかな?」「年かな?」と思って見過ごしている症状の中に、実は心臓からのSOSが隠れているかもしれません。私たちは循環器診療に強みを持ち、地域のかかりつけ医として、大阪市北区の皆さまが安心して毎日を過ごせるよう、丁寧な説明と質の高い診療を心がけています。どんな些細なことでも構いません。どうぞお気軽にご相談にいらしてください。
心エコー検査の詳細については「★心エコー図検査とは?」のページを参照してください。
